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何故無い猿岩石の番組

会社員 篠崎 祐二(60)

私達が子供の頃、冒険家は何よりも偉大な英雄であった。マルコ・ポーロ。アンムゼン。コロンブス。白瀬矗。植村直巳。彼らはその実直な好奇心と、何者にも代え難い勇敢さをもって未踏峰を制し、新大陸を目指した。その影では多くの名も無き冒険家の命が失われた。生き残った幸運な探検家達に比類無き栄誉が与えられてきたのは当然と言えるだろう。

 だが、空に人工衛星が飛びかい、世界中に通信網が整備された現代ではそのような勇気ある探検家の活躍の場は少なくなった。それでも、探検家は今、尚その血脈を残している。他ならない、「猿岩石」である。

 知らぬ人のために申せば、「猿岩石」とは日本テレビの人気番組「電波少年」でユーラシア大陸横断ヒッチハイクを成功させた若手お笑いコンビである。だが、ユーラシア大陸横断ヒッチハイクごときを冒険というなら、そのような人とは「冒険」を語るに足らぬ。

彼らの真の「冒険」はその後にある。彼らは帰国後のお笑いライブで西武球場でライブを実行したのだが、あまりのつまらなさに客の2/3が帰ってしまったという。

そう、彼らはお笑いのセンスがないにもか変わらず「お笑い芸人」を自称していたのだ。これを冒険と呼ばずになんと言えばいいのだろうか?彼らの活躍はそれだけにとどまらない、度を超した寒いジョークで数々の人気バラエティー番組の視聴率を低下させ、さらには好事家の集う小屋も数件潰した。

 言うまでもないが、冒険とは「不可能を可能にする飽くなき挑戦」である。とすれば、これほどまでにお笑いの素養がない彼らがあくまでもお笑いを目指すこの姿こそ、真実の冒険である。私はこの感動の前に、ほとんど言葉を失う。だが、この冒険があまりにも軽んじられてはいないだろうか。

 とかく今の社会は保守的な空気が蔓延している。世の大多数は凡人である故、仕方のないことだろう。だが、希有な冒険家達は保守を嫌い飽くなき挑戦を続ける。その挑戦こそが人類の歴史を切り開き、導いてきたのだ。冒険の価値を軽んじてはならない。

 さて、哀しいことだが我々の多くは冒険家ではなく、凡人である。その凡人に出来ることは何であろうか?それは先駆者たる冒険家達に新たなる挑戦の場を用意することだ。それが凡人の冒険家に対する礼儀ではないだろうか?

 我々は現代のアンムゼンたる「猿岩石」に、かれらの名前を関したレギュラー番組を与えるべきなのだ。彼らに番組を与えない限り、日本は冒険家を軽んじる文化三流国として世界から軽蔑され続けるであろう。


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