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第四回 たこ焼き師 田口 昴
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本業に勤しみながらも |
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田口昴、全日本タコ焼きフォーラム最優秀タコ焼き賞2年連続受賞。 田口昴といえば学生とは思えぬ完成度の高い独創的なタコ焼き…「sphere」…「最終大腸」…「風雲焼き」…いずれ劣らぬ国際レベルの傑作を生み出してきた日本タコ焼き界の若きカリスマ。誰もが彼を低迷する日本タコ焼き界の救世主と期待していた。 だが、彼はその多大な期待を裏切り、「プロになるつもりはない」とプロ入りを拒否し、タコ焼き部も無い平凡な建築会社へ就職していった。いわばタコ焼き界の裏切り者である。 その彼が今年、日本のタコ焼き界に、いや世界のタコ焼き界に激震をもたらした。誰もが夢見、しかし、いかな鬼才豪腕の持ち主といえどたどり着かなかった境地の片鱗をうかがわせる作品を引っさげて帰ってきた。 作品の名は「Gaia 1(※1)」。彼の伝説は正に今、序章を刻み始めたのだ。 ――全日本タコ焼きフォーラム最優秀タコ焼き賞受賞おめでとうございます。 田口 ありがとうございます。 ――田口さんはすでにタコ焼きクリエーターの道を諦めたものと誰もが思っていましたが。 田口 やめるわけはありませんよ(笑)ただ、みんなが「田口も終わりだ」なんて噂しているのが癪だから今後の予定については黙っていただけです。「後で見てろよ」って(笑)
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――「Gaia 1」には誰もが驚かされました。その雄大さもさることながら、これがほんの第一歩にだと思うと目もくらむほどです。 田口 多くの人が指摘してくださっているように、着想自体は誰でもが思いつくものです。いや、タコ焼き師なら誰でも必ず一度は夢想したことでしょう。「地球をタコ焼きにしたい」と。 ――しかし、その夢を実現しようと本気で考えた人はいませんでした。 田口 しかし、タコ焼き師ならその道に向かうべきです。その道が例え困難なものであろうとも。 ――田口さん自身はいつからその構想を実現しようとしていましたか? 田口 「地球の真中にタコを埋めたい」と夢想したのは、確か小学6年生のころだったと思います。その後、本を読んで勉強するうちに地球にはマグマがあることを知って暗澹たる気持ちにさせられましたよ。マグマの温度は600〜1300℃。どんなタコでも炭になってしまいま。すこれではタコ焼きを作れません。炭焼きですね(笑)正直、マグマの存在を知ったときには、自らの命を絶つことを真剣に考えましたよ。誇張じゃ無しにね(笑) |
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――しかし、「Gaiaシリーズ」は諦めていないわけですよね? 田口 そのための「sphere」です。タコを耐熱性の高い金属…おそらくはタングステンになるでしょうが…さらにはセラミックス球に入れ、耐圧、耐熱能力を確保します。あの作品は一部の評論家が言うように、「タコ焼きの持つ肖像の力を復活させる為の球の追求」などではありません。あくまで「Gaiaシリーズ」への布石です。 |
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――田口さんは何故、プロにならなかったのでしょうか? 田口 それは、もちろん「Gaiaシリーズ」を完成(※2)させるためです。「Gaiaシリーズ」を完成させるためには、高度な土木技術が不可欠です。そのために大深度地下開発に強い豊島建設に就職しました。私は今、豊島建設ジオフロント開発室に所属しています。プロタコ焼きクリエーターでは大深度地下にタコ焼きを埋めることなど不可能ですが、私のいる部署では造作も無いことです。これが私がプロ入りを諦め、豊島建設に就職した理由です。 ――大深度地下と言っても内核には程遠いのでないでしょうか?いつの日か地球の中心にタコを埋められる日がやってくるのでしょうか? 田口 仰る通り、現状では不可能と言わざるを得ません。しかし、0.1%でも可能性があるのなら私はそこにかけてみたい。それが私のやり方です。
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――田口さんのタコ焼きとの出会いを教えてください。 田口 私は幼い頃から星を見るのが好きな子供でした。名前が「昴」であることもあって、特に冬の空が好きでした。冬の夜になると母が近所の公園に連れて行ってくれて、飽きるまで空を見上げていました。そんな寒い冬のある日、母がタコ焼きを買ってくれました。それはちょうど六つのタコ焼きで、母はタコ焼きとプレアデス星団を交互に指して、「ほら、昴と同じだね」と言ってくれました。その時、タコ焼きがフワッァと光り輝いて見えましたよ。空の昴のようにね。それがタコ焼きとの出会いです。 ――美しい出会いですね。 田口 そうですね(笑)ですから私にとってタコ焼きは「昴」…私自身そのものなんですよ。おそらく私は死ぬまでタコ焼きと付き合うことになるのでしょうね。
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――以前、タコ焼き界のカリスマ「極星」河嶋友良さんにお話を伺ったとき、河嶋さんは田口選手を名指しで批判していましたが。 田口 いままでの話を聞いていただければわかるとおり、河嶋さんの批判はいずれも的外れです。「週刊誌を鵜呑みにして話さないで下さいよ。」と言いたいですね(笑)有名人にもなるとちゃんと調べる暇が無いのかな(笑)タコ焼きへの愛については私は誰にも負けないし、プロという枠組みにこだわってタコ焼き作りをしているわけではありません。sphereだって伝統派のウケを狙ったわけでもありませんよ。 ――河嶋さんの作品についてはどう思われますか? 田口 そうですね。世代がそれほど離れていないこともあって、私も「バナナ(1992)」には衝撃を受けたクチです。ですが、他の方のように手放しで評価はしていません。 ――どのような評価してらっしゃいますか? |
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| 田口 「バナナ(1992)」がタコ焼きの存在の根底を問うた革新的な作品であることは認めます。しかし、それ以上でも以下でもない。近頃の河嶋さんは自らの実験的な着想に溺れ、自己模倣を繰り返しているように見えます。 1997年の国際たこ焼きフェスティバルでの「乗り合いバス(1997)(※3)」なんて、ありゃなんですか。ただのバスですよ(笑)タコ焼きでもなんでもない。そのことを指摘する評論家がいないというのがタコ焼き界最大の悲劇だと思いますね。 |
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――これから田口さんはどのようなタコ焼きを作っていくのでしょうか? 田口 やはり、まずは「ガイアシリーズ」を完成させたい。これだけでも一生かかっても終わらないかもしれない大仕事です。ですが、私はもう一つ大きな夢を持っているんですよ ――それは一体なんでしょうか? 田口 タコを埋めたいんですよ。プレアデス星団にね(笑)
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地球にタコを埋める…その途方もない目的のために建築会社に入り、日々研鑚する若きタコ焼き師。なんというスケールの大きさだろう。私はインタビューの間、彼の熱い口調に酔いしれていた。 そして彼はそれをも上回るスケール夢を抱いていた!自らの名前を冠する星団にタコを埋める!正直、彼の正気を疑った。しかし、彼は本気でその夢を語っているのだ。そんな途方もない夢を見たタコ焼き師が、いやそんな途方もない夢を見た人間が今までいただろうか。私は田口昴の夢の質量にすっかり圧倒されてしまった。 「夢追い人」…それは正に彼のためにある言葉だろう。 ■ |
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壇 宗綱=文 |
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