世界醤油選手権準決勝。会場はいつになくにぎわっていた。ノーベル賞を蹴った男、ワインバーグ教授の姿をカメラに収めようと、醤油雑誌の編集者のみならず一般のマスコミが大挙して押し寄せていたのだ。
世界最高の頭脳とうたわれたワインバーグ教授の作る醤油とはいったいいかなる醤油なのか?会場の期待を一身に集めるワインバーグ教授は数万の観衆の視線を涼しげに受け流し、たたずんでいた。
かたや顔色をなくして入場するカオリ。そんなカオリにワインバーグ教授が語りかける。
「ミス・タマリ。私が完成させた醤油統一理論を存分に楽しんでくれたまえ」
ついに緊迫の準決勝戦が開始された。なんとか最高の醤油を作ろうと、今まで身につけた技術の全てを出そうと焦るかオリ。だが、その動きには明らかにいつものキレがなかった。それを悠然と見つめ、醤油を作ろうともしない教授にいらだったカオリは吠える。
「教授さん!とっとと醤油を作ったらどうなの?お題目だけでは醤油は作れないってこと教えてあげるから!」
「お題目だけで…醤油は作れない?ふっ。それは間違っているよ。ミス・タマリ」
そう呟くとワインバーグ教授は会場の影から雛壇を持ち出し会場の中央にすえた。
「お題目いや論理で醤油を作ることは可能だ。私はそれに気づいた。それが我が醤油統一理論!醤油こそが全ての事象の因果となっている…」
教授は言葉を切り、スッと息を吸い込んだ。そして、ワインバーグ教授が雛壇を力強く叩く
「つまり、古典構成的還元主義の排除に成功しさえすれば!この世の全て!この机すら醤油と言えるのだ!」
そうして教授はマホガニーの重い雛壇を審査員席に投げ込んだ。
「すなわち、これが私の醤油だ!受け取れ!」審査員席に怒号と悲鳴が飛び交う。