目覚めたデヴィッドが、クレーターに駆け寄ってを観察する。
「馬鹿な…土がガラス化している…」
カオリも穴の中をのぞく。黒く深い穴だ。
穴から熱い水蒸気がまだ噴出している。その底はまるで見えない。
「な…何これ?」
カオリは震えた声をあげる。
「わからないが…瞬間的に莫大な熱量が解放されたらしい。これも…醤王の力なのか。」
デヴィッドも流石に気おされている。
「醤油の意曰く、秘は緋にて火走る緋也…ふぉふぉふぉ。これぞ真の醤油力。」
醤王がつぶやく。
「それは…緋の巻!」
溜家秘伝の書の一説を朗読する醤王に驚くカオリ。
「真なる緋は、醤油に緋が走るのではない。醤油自身が緋と成って走るのじゃ。」
醤王はカオリに溜家の秘伝を講釈する。
「なんでお爺さんがそんなこと知ってんの!?」
詰め寄るカオリ。
「さぁて。約束通り、鍵はいただいたぞ」
醤王はカオリの詰問を無視して、手に持った2本の鍵をひらひら動かす。さっきまでカオリが持っていたはずの1の鍵と2の鍵だ。
「あっ…!」
二の句が告げないカオリ。いつもなら「返して!」と叫ぶところだが、いかにも相手が悪い。しかし、それでも何とか鍵を奪えないかと鍵を注視している。
「まだまだお主等に醤油合を任せるわけにはいかんのう。」
醤王はカオリの視線を気にもせず、鍵をもてあそんでいる。
「溜カオリ。デヴィッド・キッチョーアン。残りの鍵を二人で集めて来い。そして、この醤林寺に戻ってくるのじゃ。そのとき、お主達が醤油を継ぐに足るものか、判断するとしよう。よいな。」
醤王はひときわ厳かにそう宣言した。
なんとも一方的な宣言で、カオリとしては不本意だが、これだけの力量差を見せつけられてはいかんともしがたい。
やがてカオリの後ろにデヴィッドが近づく。
「カオリ。一緒に鍵を集めよう!二人で醤油合を完成させようじゃないか」
やたら陽気に話しかける。
「わかった。言うとおりにするよ。でも、鍵を集めてきたら…約束守ってよね!お爺さん!」
「うむ。がんばるが良い。」
「それと、その鍵、誰にも取られないでね!」
「ふぉふぉふぉ。わかった。大事に預かることにしよう。さて、お主等に良い事を教えよう。第4の鍵はタイにある。醤油十六戦士の護る鍵。見事受け取ってくるが良い。」
そして、デヴィッドとカオリは醤林寺を後にした。
残りの鍵を集めるために…
二人が去った後、醤王は夕日を見つめながら手の中で3本の鍵をもてあそんでいた。
甲高い音がハーモニーとなって周囲に響き渡る。鍵が共鳴しているのだ。その音は夕日の赤と相まって、どこか悲しげに聞こえた。
醤王は小さな声で呟いた。
「まだ醤油は求めていると言うのか…彼らが成す醤油合…いかなる未来を作るのか…」
醤王は夕日に背を向け、寺の中に入っていった。日が落ち、醤林寺が闇に包まれる。
そして醤林寺の庭にはポポフがいまだに気絶したままなのだった。