「えー!そんなのありなの!!!!」
カオリは憤懣やるかたない様子で、飛醤油を打ち放つが、全速力で去っていったポポフにはもう届きようがない。
飛醤油が空を切る音もむなしい。
騎士達は呆然と空を見上げている。想像を絶するポポフの醤油に気を抜かれていた。
「さてと…我々は対立する理由を失ってしまったようだが…」
ポポフから鍵を取り戻すことが不可能だと判断したデヴィッドは騎士達に向き直り、そう語った。
が、騎士達はまだ呆然としている。
「カオリ、サムヤム。すまないが先にバスの停留所に戻っていてくれないか。」
「えーこれからどうするの?」
「もちろんポポフを追う。それと第7の鍵もな。とにかく戻っていてくれ」
「じゃあ、デヴィッドも一緒に行こうよ」
「いや、ちょっとこの騎士達にお話があってね。」
「ふーん、よくわからないけど、とっとと来てよね。待つの嫌だから」
「あぁすぐ終わる」
カオリとサムヤムが自転車で去っていくのを確認すると、デヴィッドは騎士達に問いかけ始めた。
「さてと…やはり既に聖杯は失われていたんだな?騎士殿?」
「貴様!何を言う!」
呆然としていたガラハッドが正気を取り戻し叫ぶ。
「我々が目指している醤油の聖地…聖地への道を開くためには醤油の鍵だけでは足らぬ!鍵と聖杯がそろっていてこそ、聖地への道が開かれる!」
「………」
それこそは騎士達の秘奥中の秘奥。騎士達は沈黙するほか無かった。
「そもそも、醤油の聖地とは何か!巨大な醤油意識の眠る土地に他ならない!その醤油意識を目覚めさせることこそ醤油合の意味!醤油意識を目覚めさせるためには臨界量の醤油結晶が必要!だが醤油結晶は地球上にわずか!結晶でできた聖杯と鍵がその全て!」
「…それを知っているとは…貴様…生かしてはおけんな…」
満身創痍のガラハッドがデヴィッドににじりよる。
「フフフ…死ぬのは君たちではないかな?何しろ聖杯を守護する責務を全うできなかったのだからな…!」
「な…何を世迷いごとを!!」
「聖杯はこのグラストンベリーに眠っているとされている…それを護るのが君たちの勤めだ」
「…なぜそこまで知っている…」
「私を誰だと思っている?世界最大の醤油メーカーの力を侮ってもらっては困るな…1972年イノリ・コバイツスキー博士がこの地で聖杯を見いだした…彼がどうやって見いだし、手に入れたのかは私にもわからない。だが、確かにこの地から失われたのだ。それは醤油結晶の共振が無くなったことからも明らかだ…いかがですかな?アーサー王?」
「本当なのですか!王よ!」
ガラハッドは驚愕の表情で王を振り返る。今まで口を開かなかったアーサー王が震える声で語り始めた。
「そうだ…あの日確かに我が鍵の共振が止まった…だが、わしはそれは聖杯の力が失せたせいかと…考えた…このことは私が墓場まで持っていくつもりだったが…」
「失せたのではない。奪われたのですよ。アーサー王。あなたは騎士達の王でありながら、保身で自らをも欺いた…臆病者だ!」
「貴様!我らをなぶるか!我らの忍耐にも限界があるぞ!」
ガラハッドが吠える。
「勘違いしているようだな?私も君たちには頭に来ているのだよ!護る立場にありながら聖杯を失ったその非力、自らの欺瞞に屈するその惰弱!そして今まさに鍵を奪われた凡愚!せめて恥じて死ね!」
デヴィッドの目には冷ややかな軽蔑の炎が宿っていた。
「貴様ーーーーーーー!」
騎士達が醤油瓶を振りかざし、デヴィッドに襲いかかる。
「臆病者は夢の中で果てろ!!ウロボロス・ソイソース!」
デヴィッドが腰の金の醤油瓶の蓋を開けたその瞬間、周囲にむせかえるような醤油の芳香が立ちこめる。
生か。死か。
騎士達の意識は超絶の醤油の芳香に触れ、生死の境を彷徨う。
騎士達が目覚めることは二度と無いだろう。
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草原の中のバス停でデヴィッドを待つカオリとサムヤムの二人
「デヴィッド、大丈夫かなぁ」
「うーん、なんか怖い顔していたね」
「デヴィッドたまにそういうことあるのよねぇ。なんだかわかんないけど。」
二人ともいつもとは違うデヴィッドを心配していた。
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「醤王が誰かしら刺客を放ってくると思ったが、まさかポポフとはな…なかなか理にかなっている…
ククク…だが、誰が来ようと…後少し…後少しで…全ての鍵と聖杯が揃う…!醤油合を起こすのは私だ! 究極の!絶対の醤油を我が手に!醤油時代の幕開けだ!」
デヴィッドは一人東の空を見て、拳を握りしめた。
グラストンベリーの丘は血のように赤い夕日で満たされていた。