「世の中は嘘で満ちている…だが嘘の技を真に磨くものは少ない…」
常々そう思っていた私にとって、嘘競演は誇りであった。そこは嘘に生き、嘘に死す騎士達の決闘場。騎士達は華麗な嘘に心血を注ぎ、揺るぎない強固な嘘を築き、人の世を豊かたらしめる。その騎士達の戦いを連ねた嘘競演は正に嘘のクロニクル。
嘘という一本の槍をもって歴史の一ページに名を刻む人間が果たしてこの世に何人といようか?紛れもなく栄誉なことであり、喜ぶべきことではある。だが、私はその栄誉にいつしか溺れてしまっていたのだ。
過日、ついに嘘皇帝やゆよ帝へのお目通りがかなった。比類なき栄誉である。やゆよ帝はアングロサクソンの金色の鼻毛でできた王冠をかぶり、深紅のビロードでできたマントが地面につけないようにする忍術の特訓をされているところだった。傍らに親衛隊長のしーもす氏が控えている。いつもながら如才なさげな男だ。
「やゆよ帝。この度はおよび下さり誠にありがとうございます。私、嘘競演を任されました壇つなと申します。」
「よくぞまいった。来世紀は嘘の世紀。なにかと苦労をかけると思うが、嘘競演を守っていってくれ。」
嬉しかった。ただただ嬉しかった。喜びが私の心を包む。だが、私は皇帝に認められた喜びに目がくらみ、あの暴言を吐いてしまったのだ。
「しかし、世の中広しといえども嘘で戦っている騎士達は我々くらいなものでしょうな」
するとそれまで穏和だったやゆよ帝の目が険しくなり、傍らに置いてあったトゥシューズで私の顔を殴った!その剣幕に屈強をもってなるしーもす氏も驚愕の表情を浮かべる。
「うぬぼれるな!世界は広い!世界の嘘を知らぬ男に嘘競演議長がつとまろうか!」
するとやゆよ帝自ら一つのURL を示された。嘘屋本舗のアドレスである。そこには恐るべき数の嘘が、そして今まで見たこともない嘘戦士たちの姿があった。重厚長大、華美に走りがちな嘘競演騎士に対し、あくまで切れ味鋭い短文中心の軽快な動き。また、彼らは最新の情報を取り入れることも怠ってはいない…私は慄然とした。世界には数多くの嘘戦士がいることに。
「形式にとらわれすぎておるおまえ達と違って、彼らは俊敏で柔軟だ…そして、なにより彼らは嘘をつくことの楽しさを知っておる…お前達でも容易には勝てまいよ。」
そこで、やゆよ帝は一つの提案をなされた。
「どうじゃ、次回の嘘競演、彼らと戦ってみては…ふふふ…これは楽しい趣向じゃて…ディリータも喜んでくれることだろう…」
「すいません。ディリータとは誰ですか?」
「私の妄想上の人物じゃ、キルケゴールを愛読する巡査部長でボストンバッグに身を潜める訓練に勤しんでおる。だが、そんなことはどうでも良い。私はお前達が激しく戦うことを望む。くれぐれも期待を裏切るで無いぞ。」
「は、承知。」
「それと、お前に審判をやらせるわけにはいかん。公平を期すために、このしーもすに議長をやらせよう。普段は穏和な人物だが天才テレビ君を見逃すとビビアン・スーのモノマネをする気性の激しいところもある。今回の審判役には打ってつけであろう。」
「おおせのままに。我等かならずや世間を楽しませましょうぞ。」
「なお、敗者には正直者の烙印が押される。双方とも真剣に勝負に望むことだ。」
「それでこそやりがいがあるというものです。」
かくして、FCOMEDY「嘘競演」対嘘屋本舗「嘘特訓」の火蓋は切って落とされた。
(続く)